Dan Hartman - New Green Clear Blue

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近年、アンビエントニューエイジが再評価の対象になる中でも、この作品を取り上げる記事を見かけることが無いのは、ディスコポップのフィールドで活躍したDan Hartmanのパブリックイメージがそれらのカテゴリーとはあまりにも離れた存在だからだと思われる。ニューエイジについて考えるときに、普通ならDan Hartmanの名前は思いつかないけれど、彼が最後にリリースした掲題の作品はインストのみで構成されており、[潜在意識への旅]をコンセプトとして自宅スタジオにてシンセサイザーを用いて制作されている。HIVに関連した脳腫瘍により他界する彼が、その5年前に最後に取り組んだ作品が、特定のパターンとトーンによるミニマルなサウンドであることは、ミュージシャンとしての生き様を刻みつけているように感じられる。

ジャケットの写真のように涼しく透明な鏡面世界へ誘うような音色は、静謐な音の重なりとソフトなタッチで、この作品の制作前に[音楽がどのように聴き手の感情に作用するか]という類の文献を数ヶ月にも渡って読み込んだ成果も感じられる。

また、この作品の3年前には、リリースが予定されていた「White Boy」がレーベルの意向によってお蔵入りにされており、その出来事もミュージシャンとしての意志や態度を明示しようとするきっかけの1つになったのかもしれない。